床屋

ジィ「角の床屋を予約してきたぞ。」

私:「なぬ?角の床屋?」

ジィによく聞いてみると、団地入り口付近にある小さくてお洒落な美容室のことであった。
民家に併設している住居兼店舗(美容室)で、南仏プロバンス風の店構えがなんともオシャレな雰囲気をかもしだしている。

私:「そこは床屋じゃなくて美容室だよ。予約って今日?何時に行くの?」

ジィ:「予約がいっぱいで、7月3日に予約がとれた。」

私:「今、4月なんですけど・・・。」

お世辞にも数ヶ月待ちの人気店には見えない。

毎日のように美容室の前を通りかかるが、いつもガラッガラである。

はて、ジィが夢でも見たのだろうか?
それとも美容室側がジィの様子を察してソレなりの対応をしてくれたのか?
いずれにしても本当に予約していたら悪いので電話を入れた。

私:「そちらに7月3日に予約を入れた○○ですが、申し訳ありませんがキャンセルしたいのですが。」
美容室:「ふぁああああ?????」

は?ならまだしも、ふぁああああ?????って何だょ!と思いつつ、こちらが悪いことに変わりは無い。かくかくしかじかこういう訳で・・・と丁寧に謝り電話をきった。

とりあえず床屋に行きたいんだろうから、週末あたり連れてこか。

ハゲてるけど・・・

ワクチン陰謀論

歳の割にスマホを使いこなすバァ。ラインデビューは私より5年も先輩であり、最近は暇さえあればイッチョマエにスタンプや写真に動画などビシバシ送ってくる。

今日もピコッとバァからラインが来た。

それを何気なしに読んで思わず二度見、ギョッとする。

内容は・・・

 『新型コロナワクチンについて』

 ◆その1、ワクチンは半分が水銀である。

 ◆その2、何人もしんでいる。

 ◆その3、ワクチン注射の際、監視目的でマイクロチップが一緒に埋め込まれる。

だから絶対にワクチンは受けない!ですと・・・(汗

バァの友達からチェーンメール的なラインが送られてきたらしいのだが、んなもん信じるほうも信じるほうだ。(呆れ

 ◆その1⇒微量ならまぁ。それより”濃度”じゃなくて”半分”って何?ザックリ過ぎる。

 ◆その2⇒そら半分(致死量?)の水銀打たれたら何人もしんでしまうわな。

 ◆その3⇒大富豪や要人なら分かるけど、バァを監視するほど暇な人間がこの世にいるのか?バァの監視←何目的なん?

と、説得を試みるも頑として首を縦に振らないバァ。

それに比べてジィはワクチンが待ち遠しいらしく、日に何度も「ワクチンは何時だ?」と尋ねるのがルーティンとなっている。

対称的なジィとバァ、水と油。

困ったものである。

墓参り

春彼岸・盆・秋彼岸・正月と、1年に4回の恒例行事(お墓参り)。習慣というのは恐ろしいもので、行かないと気持ち悪くて落ち着かない。ということで10日遅れではあるが春彼岸の墓参りへ。

祖父母親戚の墓場が市内3ヶ所にバラけているので墓へ参るのも半日がかり、ちょっとしたイベントである。墓場へ向かう車中ではジィが同じ内容の昔話しを延々と繰り返すのだが、毎度シチュエーションが微妙に違っていたりする。でもそこで、『え?さっきはこう言ってたょね?』なんて言おうものなら最期、烈火の如く怒り出すクソジジィなので、いつも相づちと共に右から左へ受け流している。つか運転しながらジィの話しをまともに聞いていたら、おそらく事故る。

 

~ そんなこんなで墓場へ到着 ~

 

地元(田舎)とあって墓場中が御近所さんだらけである。祖父母にお線香をあげてから、そっちこっちのお墓にも手を合わせていると、斜向かいに住んでいたY子さんの墓の前でジィが立ち止まった。

 

そして・・・

 

ジィ:『Y子さんに何日か前、そこの畑でバッタリ会ってな。久しぶりにお茶飲んで話したんだょ。』

   そのY子さんの墓標には平成22年と刻まれているのに・・・だ。

 

ジィ:『Y子さんの上の息子は、大学に行ってんだと。』

   Y子さんの息子はとうに50歳を過ぎている筈。

 

ジィ:『Y子さんも歳とっちゃってな~びっくりしたょ。』

 

 

私:『いやもう、死んでっから。』

  

 

そう突っ込まずにはいられなかった。

そしてまたジィは怒り出す。それを私は受け流す、右から左へ。

そう、ムーディー勝山のように・・・。

糊付け?

最近、ジィはますます怒りっぽくなっているのだが、その怒りの原因は大抵がテレビのワイドショーである。ジィの部屋から何やら文句が聞こえてきても特に実害は無さそうなのでそのまま放っておく。テレビの前に座り、加藤浩次と怒りを分かち合い、思う存分に毒を吐き出すのだからストレス発散にもなるだろう。

とまぁ普段からこんな調子だが、今朝のジィの怒りはいつものソレと違っていた。一段と声が大きく、なかなか収束しない様子だったので恐る恐る声を掛けてみた。

私:何怒ってんの?

ジィ:こたつ、ノリづけしやがって。

私:???

ふとこたつに目をやると傾いているではないか。ネジ山が潰れた結果、ネジが抜けてこたつの脚が取れかかっている。ノリじゃなくてネジ、ネジが抜けたんだよ・・と説明しても、頑として『ノリづけしやがった』の一点張りだ。いくら説明しても埒が明かないので、とりあえずノリづけしたヤツが悪いということにしてその場を収めた。

ここ5年間で、こたつを買い換えるのはこれで4度目である(ほぼ毎年)。言うまでもなくジィの使い方が悪いのであって、決してこたつがノリづけされていた訳ではない。自分が壊したという認知処理が上手く出来ず、なんとなく引け目もあり、不安と焦りで感情がバグってしまった結果、怒り爆発!ノリづけしたヤツが悪い!となってしまったのだろうか?謎である。

自分の失敗や物忘れを、なんとか取り繕おうとする(言い訳をして誤魔化す)。誰かのせいにしたり、怒りっぽくなる。どれも認知症の症状らしいが、そんな場面が年々増えてきている。生きていれば誰しも歳をとっていずれはボケてしまうのが普通なのだから、ボケを取り繕う必要なんてないのになぁ・・と思うけど。逆にボケている本人からしてみれば取り繕っているつもりは無くて、言い訳も本人なりに正当な理由を述べているに過ぎないのだろう。

いずれにしても、いざ自分が歳をとってボケてしまったら否が応にもそうなってしまうのかな?

トホホですな。

警告

日曜日、いつもより少し遅めの朝食。休みの日の午前中は何かと忙しい。炊事、洗濯、掃除、買い物。食後のコーヒーを飲んで気合いを入れる。さて、まずは洗濯から。

洗濯機のフタを開けるとジィの洗濯物が入っていたので、洗剤を入れてスイッチを押す。そして鼻歌まじりで掃除機をかけていたその時、けたたまく警告音が鳴り響いた。

「ピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピー」

何事だね?

音の主は洗濯機。どうやら排水側になんらかの問題が生じて洗濯槽に水が溜まらない様子?

ということで、ジィの洗濯物を取り出しフィルターと排水溝の掃除、さらに背面側を少し分解して排水弁の異物等をチェックすることに。

結果、洗濯機から10円玉や1円玉がざっくざく。

こ、小銭まで入れやがって。

ポケットの中をチェックすべきだったと反省(凹。

これで直るかな?直るといいね!と、バラした洗濯機をもとに戻そうとしたその時、またまた事件が起こった。

あ、ヤバ・・・ 元に戻らん。

アホ過ぎる!

とうことで、速攻あきらめ「餅は餅屋」へ。

跡形も無く

いつものように慌ただしく仕事へ行こうとする私をジィが呼び止めて一言。

ジィ:「おい、財布をどこへしまったんだ?」

私:「???」

ついにきました物盗られ妄想!と、一瞬身構えた。

聞けば財布が見当たらないと言う。長くなりそうな案件なので、「帰ってきたら聞くから仕事に行ってくるね。」と玄関のドアを閉めた。

そして仕事から帰った私はジィに財布のことを詳しく聞いてみた。

ジィ:「ズボンに財布を入れたままにしておいたら、ズボンと財布が無い。どこかにしまったか?そういえばズボンに通したベルトも無い。」

んなわけあるかぃ!と、家中くまなく探したが何処にも見当たらない。

しばらくするとジィが「歩いて100円ショップまで行ったので、トイレにズボンを忘れてきたかもしれない。」と言いだした。

いや仮に忘れてきたとて家までパンツ一丁で帰ってきたとでも言うのだろうか?

有り得ない話しではないが・・・

それとも空き巣にでも入られたか?ベルト&ズボン&財布をセットで盗まれた?

普通は財布だけ持って行くよな。

あれこれ考えても無いものは無い。

跡形も無く・・・

「あきらめよ」とジィをなだめ、新しい財布を買いに行ったとさ。

めでたしめでたし。

黒い塊

さてさて、晩ご飯でも作ろうか。

冷蔵庫を開けストックを確認していると、豆腐の上に何やら黒い塊が乗っている。

真っ黒の丸い塊。

「何じゃこりゃ?」

恐る恐る触ってみた。

プラスチック製である。

バレンタインが近いせいもあり、一瞬チョコレートを連想したが・・・

「いや待てよ、買ってねーし!」

頭をフル回転。そして、よみがえる記憶。

そう!この黒い塊は、昨年しかけておいたコンバットである。ゴキブリの巣ごと駆除するというあのコンバット。

なぜ冷蔵庫に???

ジィの仕業ですな・・・

血痕

休日の朝、掃除機をかけていると床に何やら

けけけ・・血痕がっ。

またもや髭剃りでヘマでもしたか?それとも靴擦れ?

私「何これ怪我したの?」

ジィ「昨日、転んだんだろうな。」

ふとジィの手もとに目をやると、ざっくりと切れている。

「ひぇ~!」とあとずさる私。

「今すぐ病院行くぞ!」とジィを急きたて近くの病院へ。

受付の女性にどうして怪我したのか聞かれると、「転んだんじゃないか?」とシドロモドロに答えるジィ。

本人曰くあまり憶えていないらしい。

しばらくして今度は看護師がやって来て、どういう経緯でこうなったのかと更に詳しく聞かれる。

面倒くさそうに的を得ない答えを繰り返していたジィだったが

「転んだからか?」と逆に看護師に質問しだす始末。

そこでようやく看護師はジィさんがボケてることを察したようだ。

フィジカルアセスメント終了。

そしてジィが呼ばれ診察室へ。

開口一番「どうしてそうなっちゃったの?」とT医師。

本日3度目の同じ質問にジィがついにぶち切れた。

「んだからさっきから分からねーって何回も言ってんだょ!」

咄嗟にジィの頭をひっぱたきそうになったがグッと堪え、ただただT医師にひたすら頭を下げる私。

ボケジジィに悪態をつかれながらも「そうか、分かんないか~」と上手になだめながら手際よく傷口を縫合するT医師。

お医者さんって、やっぱり凄いです。

最近のジィは突然怒り出したり辻褄の合わない話しを繰り返したり、手に負えませぬ。

晩超皿屋敷

晩ご飯、何にしよ~。

台所に立ち、ふと水切りラックに目をやると皿が無いことに気付いた。

食器棚を探すが何処にも見当たらない。皿一式が無いのだ!

さては割ったな?

そして、ジィへの事情聴取が始まる。

私:「お皿割った?」

ジィ:「割ってねーぞ!」

私:「お皿が全部無いんだけど!」

ジィ:「俺はやってない!」※少々キレ気味。

まるでシラをきる犯人だ。

あきらめて夕食の準備に取りかかろうと冷蔵庫を開けたその時、なななんと!キレイにお皿がしまわれているではないか!冷蔵庫の中段が食器棚になっている。にしても、よくもキレイに並べたもんだな。

なんつって、感心している場合ではない。片付けねば(ため息)。

いちま~い・・・ にま~い・・・

晩、超皿屋敷。

ミステリー

■ジィが出来ないこと

・窓の開け閉めができない。

・テレビ以外の電化製品が使えない。

・ゴミの管理。※押し入れに投げ入れる

・洗濯物の管理。※押し入れに投げ入れる

・上着が上手く着れない。

・・・などなど。

出来ないことが多くなった反面、買い物も出来るし、時々迷うけど散歩も出来る。しかも計算なんて私よりも早いときたもんだ。

不思議で仕方がない。