ジィを引き取ってから1年、驚異の回復ぶりを見せる。なんと自分の名前をなんとなく書けるようになってきたのだ。

どこか必ず間違えてはいるが・・・。

加えて、とにかくしゃべる。しゃべってしゃべってしゃべりまくる。数パターンの昔話しをリピートするので、こちらも延々と適当なあいづちを打ちまくることになる。全く話せなかった頃と比べたら見違えるほどの回復ぶりだ。認知症ではありません!と言いきったM医師の診断もまんざらハズレでは無かったのかもしれない?と思ったが、いやでもやはり以前の父とは違うのである。

その日もいつもと同じ昔話しが始まった。それきた!と適当な相づちで右から左へ流していると、めずらしく新しいエピソードを話し始めた。

ジィ「昔、バァと東京に映画を観に行った帰りにからまれてな、17人に囲まれたんだ。・・・・・・略・・・・・・ で、全員やっつけてやったんだ。」

私「ぇぇぇええ?」

そんなことがあったのか!と驚いた私は、その晩、さっそくバァに聞いてみた。

バァ「そんなことある訳ないでしょ。ジィと映画なんて観に行ったこと一度もないよ。ボケてんだから信用しないの!」

私:絶句

幻だそうです。